やっぱりいろいろあると楽しいです。
以前はホイットレーのクリップに綺麗にとまっているサーモンフライに憧れて、実際そうやってみたりしました。確かにカッコイイのですが、フンワリ呼吸するようなフライが欲しいのに、使う段になってクリップから外したフライがすっかり硬直しているように見えます。そしてどこか漂う不自然!?自然に反逆しつつ自然に帰るというのも悪くないのですが、フルドレッシングのサーモンフライのみがクリップに並ぶ感じは自分にはちょっと違うと思ってしまいました。
長いことスティールヘッド関連の本を読んでいて、スティールヘッダー達のフライボックスの中は若干UGLYとも言えるような、美意識にかけるものが目に付きました。そんな中でも、不揃いだけれど、どのフライも数回の使用を終えた、実践をかいくぐってきたような渋い内容もたまに見かけることがありました。綺麗な未使用のフライが整列していたりする世界はどうも自分が居たいところとは違うようで、自然の中の不揃いや不均衡がフライボックスの中にあるほうに惹かれ始めました。と言いつつ”実用一点張り”のみの集まりではフライの多様性を楽しめない。アートで発展したものや、生態から派生したイミテーションを含むものや、思い切り虫っぽいものまでいろいろあるのがいいし、楽しいのです。
昔から好きなクラシックのグリーンハイランダーは常にベンチ入りしていますし、実際に使ったりもします。生まれて初めてのスティールヘッドがこのフライをくわえてくれたことは思い出です。黒っぽいのが必要でも遊びたい時はブラックドクターを結びます。それより実践的なダーク系でスパースボディならパープルキング一択で。神経質になっていると想像する場面では小型のシルバーグレイ、ブルーチャーム、レディキャロラインを使ってみます。ニンフともストリーマーともつかないウサギの毛を使ったオリジナルの魔弾は失っても惜しくない量産型で、出番が最も多いウェットフライです。そして一応グリーンバットスカンクも。ボディ後半のグリーンはひょっとしてカディスピューパを模しているのかと想像しつつ。けれどオクトーバーカディスのオレンジボディは実はアクロイドの方が近い気もするのでそれも仲間に加えます。そしてドライフライたち。ボリュームのあるボディが北米の大型カディスっぽいのだろうかと思いつつボマーが最初の選択肢。そしてハリーレミアが愛用したグリースライナーは浮力を維持するためのテールがついた、私達におなじみのエルクヘアカディスのシルエットです。
そんなフライ達をとめるにはフォームが貼られた深いボックスがいい。もちろん軽いものが助かります。落としたり、流されてしまった時のために、同じような内容のものをもう一つ車かバッグの中に仕込んでおきます。いざとなったからといって、フライを買いに走ったり、もらったりすることは避けたい。そうじゃありませんか?やっぱり釣れなくたって自分のフライで釣りをしたいじゃないですか。
フライボックスを開けるたびに不揃いに並んだ多様なフライが空気を含んでフォームに止められていて、選ぶのが楽しくなります。どんなにロッドやリールが素敵でも、あるいは服装キメキメでも、魚を誘うフライの選択は大切にしたいし、ボックスの中から取り出す瞬間を楽しみたいものですよね。