ボートシーバス3

2022年、カナダ行きが叶わない分の資金は思い切ってシーバスに振り向けて、今シーズン様々経験を重ねています。昨季から向き合って取り組んで今季で2シーズン目、お楽しみはまだまだこれからという感じです。

9−11月は明るくなってからをメインに遊びましたが、大潮、長潮、上げ潮、下げ潮、サーフェスの釣り、シンキングの引っ張り、沖の停泊船、ストラクチャー、壁打ち、早朝、昼頃などなど、これらが様々組み合わさるので同じパターンになることは今のところなく、海に出れば毎回発見があり、なぜ?どうして?と思うことに毎回ガイドは答えてくれます。月に最低2回を目標に出ていますが、”次はこれだろう”ということが現場で当てはまらずに頭の中は毎度かき回されています。以前スティールヘッドで毎夜テントに戻っては思い巡らせてきたことと同様、ボートから狙うシーバスもフライフィッシングに最高の相手と思うようになりました。ただし違うと感じることがあります。

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ある夜半、釣りを終えてけだるい感じの中で思ったことですが、東京湾にシーバス釣りに出て行ってもカナダでスティールヘッドを追いかけてきた後のように充填されるものを感じないのです。たとえば、キスピオクスが流れる森は広大で、木々も植物も土も水も、そしてそこに住む昆虫や動物たちも連携連動連絡しあっている空気を創り出しています。そこに分け入って釣りをすれば、足元からエネルギーを充填されるかのようで、疲れは伴いつつも旅を通じて徐々に生命力がみなぎって行く感覚を覚えます。そして一呼吸一呼吸に浄化を感じるかのようです。何かカラダじゅうの細胞に自然のチカラが満ちてゆくような感じで、実際に帰国後は野生化したかのような感触になる。けれどシーバスの釣りをしてもこういったことは感じないのです。いわゆる”ゲーム”としてその格調や深度に感嘆しつつも、自然からのエネルギーの充填はカナダで感じたようには起こらないのです。いや、あるいはまだ自分の体が東京湾の海からのエネルギーを受信できるようになっていないのか。

私たちは仕事やその現場、人付き合い、あるいは日常生活の中など、何がしかストレスを感じつつ過ごすことがあり、それを霧散させることができるのが私たちにとっての釣りです。日頃仕事に捉われてしまっていたり、あるいは後悔や反省の雲が頭の中にかかっていたりすることがありますが、それらが一気に吹っ飛ぶのが魚がかかった瞬間であり、水中からの魚信は脳のクモリを払う効果が確実にあります。そしてスティールヘッドのように野生の環境に生きる珠玉とも想うべき相手が何分も、何十分もファイトするとき、その効果は絶大です。頭の中の邪念がブッ飛び、ロッドの先、ラインの先につながる超貴重な相手と1対1でつながっている間中、例えようもない緊張と集中が起こり、それ以外はありません。

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ボートで巡る横浜近辺のシーバスたちにもその力があり、彼らはネイティブでありワイルドな素晴らしいゲームフィッシュです。正直驚いています。その魚の逞しさ、フライフィッシングでの面白さに。現在の確実な魚影は近代の浄化施設が整った関東圏を数十年前とはかなり違うものにしていると想像します。例えば70年代、80年代は工業廃水の垂れ流しは恐ろしいことになっていて、目に見えない化学物質が東京湾に耐えず注がれていた上に、各家庭だけでなく東京や横浜の繁華街からは毎夜汚水が東京湾めがけて流れ込んでいたと想像すると、フライラインをこの海の上で伸ばしたくなったかどうか。今に至る間にテクノロジーは進化し、劇的に水質は改善されてきました。しかし釣りの現場、彼らの生息している場所はやはり人間の環境と混じり合い、東京湾の埋め立てやコンクリートの港に囲まれ、それらが変に複雑で、自然では起こらない海岸線の延長をもたらし、水質の改善と相まってシーバスのポピュレーション増大に影響しているという話も聞きます。良くも悪くも人の生活直下で翻弄されてきた中でこうしてゲームフィッシュとして親しまれているシーバスを想うと複雑であり、これはカナダBC州のスティールヘッドとはえらい違いです。(BCのスティールヘッドも気候変動の影響を受けてさらに危機に瀕していることを考えれば人に翻弄されていることは間違いないのですが、このようにダイレクトではないと思います。)

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世界とつながる海を自由に泳ぎ回る日本のネイティブフィッシュであるシーバスは、放流された北海道のニジマスやブラウン、漁協がダムや堰堤の間に放ったヤマメやイワナとは違う、都会の海に生きる野生を感じることができる相手です。その貴重な魚ですが、フィッシングプレッシャーもさることながら、それ以上に震災以降三陸沖での漁業が成立しなくなったことで東京湾のスズキは市場に並べるために漁業の対象になり、減りつつある話も聞きます。気候変動による海流の変化は忍び寄り、今年は湾内に入ってくるのが遅れているとか。アラスカの漁業の影響と気候変動で深刻なダメージを受けるスキーナのスティールヘッドとかぶるような理由を聞かされます。ここでもやっぱり以前はもっと良かったとか、10年前は今以上だったとかいう話を聞かされることになるのです。パタゴニアのイヴォンシュイナードは温暖化によって冷水性の魚、鮭鱒族が危機に瀕していることを嘆き、自嘲的に「これからはウォールアイ(スズキ目の魚)でも釣ろうか」と言っていました。まさか東京湾のシーバスフィッシングが盛んなことは気候変動が一因なのでしょうか?自分はスティールヘッドの危機を嘆きつつ、そちらに逃げ向かうのか?いや、そうではないと信じたいところです。自然に遊び生き物を相手にする釣りというスポーツを愛好する人たちはきっと、地球環境に対して余計な影響を少しでも減らすように日常も生きていると思います。そしてこれからも東京湾のシーバスフィッシングが健全に保たれることを願いつつ。