海は難しい

この数年(2021〜2024)、釣りで奄美に来ること5回。毎回釣り時間2、3日で、いつも違うタイミングだからなんとも言えませんが、とにかく難しい。東京湾のシーバスや浜名湖のクロダイとはまた別の種目で、ソルトウォーターフライフィッシングと一つに括れないくらい違います。考えれば、淡水だって、ルアーだって、餌だって、釣りという世界には無数の仕掛けが存在し、場所も対象魚も違えば実に様々な方法で行われています。フライフィッシングもロッド、リール、ラインなど、道具の見た目は淡水海水止水で同じように見えながら、実際は違うものが無数に組み合わされている。そして自分の釣りはまだ海の世界に応じていないことを思い知らされていて、海フライに広がる深淵を覗き込みつつあるようです。

あくまでわずかな経験の中の話で、しかも個人で探して釣りをしている場所での話ですが。

まず、狙う魚達はいつも移動していて、居着いているということがない。一時的にもそこに留まると言うことがない。河を遡上するサケマスは上流を目指す途中にどこか留まる場所があって、そこが狙い目なんですが、海の魚達にはそれがない。幹線道路らしきよく通過する筋はありそうですが、いつ通るかは全くわからない。時間帯としてはある程度わかるけれど、それも1、2時間のうちに1、2回通るかどうかの頻度。潮の満ち引きに応じて刻々と変わる自然の中で彼らは神出鬼没、いつどこからやってくるのやら。

 

クロダイですが、10月の今回、ある場所で上潮時にかなりのテーリングに出会いました。でも本当に神経質で、キャストすると百発百中飛んで逃げていってしまう。以前はそうでもなかったのに今回はどうにもしようがなく、結局掛からずじまい。浜名湖でやっていたノリは全く通用しませんでした。

 

7月に良かったところに場所を移しましたが、今度はテーリングが全く見られず、待てど暮らせど水面をヒラヒラする感じはなく、時たま見かけるナーバスウォーターもいつどこでどの方角でどの距離で起こるのか掴めずでした。その上風で水面に小波が立ち、曇って小雨がぱらつく天候では自分の眼力で泳ぐ魚を見つけることができず、そのまま終わりました。

 

そしてトレバリーです。前回来た時に両手ほどの回数見かけたので、今回思い切って狙ってみようと考えました。ヒラアジと言っても色々で、早いのやらゆっくり回遊しているのやら、小魚めがけているのか甲殻類を探してウロついているのか、様子がさまざまで惑わされます。一つに絞って2日に渡って各5時間フラットに立ち続けたのですが、水柱が立つのは遥か遠く、背後に音を聞いて振り向けば、波を立てて急ぎ通り過ぎて消えて行く。射程内にボイルが起こるのはなぜか決まって向かい風の方向で、ようやく投げてもとっくの昔にどこかに行ってしまってる。

今回”トレバリーの日“とも言える時間を作ったのですが、通る場所は大体掴んでいるつもりでも、なかなか現れるまで待てないものです。5時間経って射程内に現れたチャンスは片手分あるかないか。それもバッチリの距離と方向で起こるなんていうのは奇跡なのかもしれません。偶然にも釣れた1匹はこちらに向かって泳いできた2匹に慌てて繰り出したオフショルダーキャストが適度に決まって食ってくれたヤツで、クロダイとは比較にならない鋭い走りとリールファイトに、これぞまさにソルトウォーターフライフィッシングというものを感じる魚でした。ですが夢よもう一度と翌日も同じようにやってみたものの、何も起こらずじまい。見かけた魚達の中にはかなり強力な、大型の魚もいたのですが、彼らの足は早く、あっという間に泳ぎ去ってしまいます。こうなると使っていた道具にもう一工夫が必要に思ってしまいます。

フライフィッシング トレバリー フライロッド スコット セクター アイランダー フライリール

使っていたのは9フィート7番ですが、おそらくティペットとバッキングが十分であれば見かけた大型の魚でも戦えそうです。ですがしっかりしたフックでそこそこの大きさのフライを、より素早く、もう一二歩向こうに届けるには7番では不足です。ふと10番であればどうだろうか、どうせほとんど投げないのだし、と考えてしまいました。一瞬のためにこの道具を揃えて、一瞬のために何時間も立ち、キャストしない4時間半を水に浸かって過ごし続けられるか。こう言うフライフィッシングは今まで経験したことがない新しい世界です。ですがジャック・サムソンのPermit on the flyでは10番ロッドがスタンダードです。スティールヘッドでも選ぶ道具はライト傾向で、その流れでシーバスやクロダイも6番を考えがちですが、海の環境はまだよく掴めていない。以前強めのスペイセットアップでスティールヘッドに挑んでいたとき同様、ヒラアジ類を狙うのであれば10番から行ってみるのも良いかもしれないと考え始めています。

前回は結構な大きさのパーミットが底を漁る様を見て2Xティペットに結んだクロダイ用のフライを投げられませんでした。今回は真っ青な大きな塊が水面を盛り上げて逃げていく、これまた結構な大きさのマクブにキャストするタイミングを失いました。その他忙しく泳ぎ回るカスミアジ、浅場に侵入するオニヒラアジ、ボラを吹っ飛ばす正体不明の魚はGT!?

 

さあ、どうしたものか、やってみようか。