わかったつもりで気がついていない、見ているけれど理解していない、ということはいろいろな事でありますよね。大好きなフライフィッシングでも魚から見たらどうかを考えれば意外と気づけるのに、人間本意でどうして?どうして?と考えて気ずけないことはしばしばです。

浜名湖 クロダイ フライフィッシング フィンノア フィンノール フライリール スコット セクター

ある時クラブメンバーのカルロスと釣りをする機会がありました。海外のフラットに憧れていた自分は体験できる可能性を探していて、それがまさに浜名湖にあるとわかり、浜松市在住のカルロスに頼んで経験したのが3年前(2021)。そして今回、3年の経験を経てから観た彼の釣りやアドバイスに驚愕しました。自分は完全に見方を誤っていたのだと。この日は自分が4ついただいた間に彼は16枚。その差は歴然です。

彼に尋ねました。

 

「違いは何、リトリーブ?」

「わかんないよ、何かなあ?Youはどれくらいやってる?」

「3年前からで、毎年2〜4日やってきました」

「自分はここに住んでて、この釣り20年だよ。しかも毎週のようにシーズン中は来れる」

「・・・・」

 

つまり経験?手先の器用な素人が綺麗に作った竹竿を持ってきてマイスター(例えばゲーリー・ハウエルズやグレン・ブラケット)に評価を求める時に言われる「100本作ってからもう一度来な」というのと同じかもしれません。

 

カルロスが続けます。

「彼らがテーリング中の視界はとても狭い」と。

つまりフライが視界に入っていないことが多いのだと。

「下を向いた時、彼らの視界は半径20cm。人間もそうでしょう?」

浜名湖 クロダイ フライフィッシング

クロダイになって想像してみると、浅瀬に入ってくるのは確実な餌があるから、でも危険がいっぱい、上空から丸見えで鳥の攻撃もあったり、逃げ場はほぼ平面でしかない。浅瀬に立つ釣り人もきっと見えていて、何を仕出かすかわからない。でも浅場にはきっと好物がいて、食べたい、それには抗えない。泳いで移動中は前方上方ともに視界は広く、警戒できる。でもいざ水底に好物を発見すれば注意は一気に下に向いて、獲物が逃げ込めば尾っぽを水面に出してでも掘ってありつこうとする。この時の視界は一気に狭まる。

餌を探して食事に来ているフラットで何も反応がないというのは、フライが美味しそうでないか、動きが美味しそうでないか、だと思っていました。けれど事実としては、フライも人それぞれ、リトリーブも人それぞれ、で結果を出しているわけです。つまりそこは決定打ではない。では何が違うのか?恐らく、つまり、単純に、魚がフライに気がついたかどうか。魚の視界に入るプレゼンができたかどうか。気がついていないのを色やリトリーブの方法で気づかせることができると思っていましたが、どうやらそこではない。魚の群れと思しきナーバスウォーターを通して食ってくる時もあれば全く反応がない時もある。大体リトリーブの初期段階で掛かり、どんなに丁寧に誘っても後半ではまずアタリがあることはない。フライを落とすところが良くて、視界に入り、気がついたので食ってきている。そんな感じです。気がつかなければ何もしない。しようがない。

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フラットのクロダイは鱒と違って餌はほとんどの場合自分より下にいるのだと思います。底をほじくる時のクロダイの視界は、鱒が餌の流下を待って上を見ている時よりうんと狭いのが想像できます。その狭い視界にフライを入れることができるかどうか。テーリング中の魚に50cm離れて落としても視界に入っていない。ちょうど良い距離に落ちても魚の背中側だとフライは見えない。派手なフライだろうと目に入らなければ反応しようがない。フライの色、リトリーブの方法、キャストの場所など色々考えるけれど、魚の向こうに届こうが、地味めのフライだろうが、まずは驚かさずにフライを届けて、その後は視界に入れることができるかどうかではないか?魚の向きを確認して素早くフライを届ける、泳いているクロダイの視界は広いから進行方向に離してキャスト、下向いている時は半径わずか20cm?の視界だからピンポイントでキャスト、あるいはテーリングの向こうに落として視界に入るようにリトリーブして持ってくる。これができたらどんな結果が出るか?この釣り、まだまだやめられそうにありません。

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