なぜScott Sector?

納得のいく釣りの時間って、どんなでしょうか?素晴らしい自然、美しい魚、お気に入りの道具と、気の合う仲間と!?それもそうなんですが、納得がいったかどうかはそれらに加えて気持ちよくフライキャスティングが決まり、フライが思ったところに届けられるかだったりしませんか?しょっちゅう絡んだり、繰り出すループがダメダメだったり、狙いから外れてばかりだったり、そんなことではフライフィッシングの時間に納得感が生まれにくくなっていく。やっぱりフライキャスティングこそフライフィッシングたらしめる一番の要素だと思うのです。そこで考えるのがフライキャスティングを夢のように達成するための道具だと思いますが、やっぱり要はフライロッド、となってしまいました。ソルトウォーターの世界に踏み出して、今までとは違ったフィールドゆえに違った事象に遭遇して困惑し、確かな技術の方が大切だというのに、解決策として竿に夢を描いてしまいました。

スコット セクター フライロッド フィンノア フィンノール フライリール 浜名湖 クロダイ

ある時スコットのS4Sを振る機会があり、シーバスやクロダイに使っている手持ちのグラファイトロッドとは数段の違いを感じました。振り心地に“デザイン”を感じるグラファイトロッドは本当に久しぶりでした。昭和の終わり、あるいは平成の始まりの頃のセージやルーミスを最後にシングルハンドのグラファイトロッドにほぼ親しむこともなく生きてきたので、スコットのシャープな振り心地が手に残り、テーパーの妙から空中に描かれる鋭いループの残像が気になって仕方なくなってしまい、、、ということでスコットのソルトウォーターロッドを検索しまくり、海外サイトのレビューや比較サイトを舐めて歩きます。

ハイエンドのフライロッドの選択はフェラーリがいいかランボルギーニがいいかの議論と同様に好みの問題と言われます。セージR8、ウィンストンAirマックス2T&Tセクスタント、ルーミスNRX+、そしてアスキス。どれも素晴らしいに違いないのですが、ネット上のさまざまな声を読むにつけ、スコットでやはり決めたい、その中でメリディアンやS4Sに戻るよりは、ここは一念発起、セクターで行くしかないとなり、ついには大枚叩いて9‘#7を手に入れてしまいました。

スコット セクター フライロッド フィンノア フィンノール フライリール 浜名湖 クロダイ

手にした竿は炭素そのままな表情、昔ながらのアンサンドフィニッシュで、最高のマテリアルを使い、最新鋭のコンポーネントを施しています。手作業の部分を大事にしている同社だからなのか、どこか懐かしさを残している感じはアンサンドフィニッシュや手書きのネーム入れも手伝っているのかもしれません。

初めの印象は、やはり硬いな、でした。もっと先調子をイメージしていたのですが全体ハリがある、これが昨今のブランクスなのかと感心します。ラインを通して駐車場で振れば、高い位置でシャープなループが飛行します。一度振ればフライロッドの命と言えるテーパーにデザインを感じます。グラファイトロッドでそれを感じたのは昭和時代のハーディ以来。70−80年代のハーディはいかにして往年の名竿であるバンブーロッドのアクションをグラファイトで実現するかの試みのようにも思えました。スコットのデザインは最新の素材でタフなコンディションを楽しむための進化なのでしょうから、全く違うものだとは思います。

スコット セクター フライロッド アイランダー フライリール 東京湾 シーバス

早速東京湾のシーバスに持って行きました。実際にボートに立ってキャストすれば、いつもより数メートル先にフライは届きます。けれどベストなラインと組み合わさっていない感触で、スウィングウェイトは想像していたよりも軽快に感じない。ロッドが負けている感じは全くないですが、芯の通ったブランクスのせいか9フィートを9フィートで感じるというと変かもしれませんが、竿先もお辞儀せず、ロッドがしっかりしているのです。だからと言って硬くて曲がらない、というわけではなく、これが最先端のロッドの感触?なのかどうなのか。あるいは組み合わせた8番ラインのウェイトなのかテーパーなのか。少し慣れとラインの調整が必要な感じでした。

ところがその印象は浜名湖のクロダイに使って一変しました。初めエアフロのフラッツユニバーサルというラインの6番を組み合わせたのですが、セクターはとても軽快で、今までのロッドとの差を大きく感じます。警戒心の強いクロダイ対策で水面へのインパクトを減らしたくて6番を選んだのですが、使うフライのサイズを考えてもセクターとの相性に過不足を感じません。ただし、もう一歩距離を投げたいという時があります。そうなると7番の竿には7番ラインが自然です。同じくフラッツユニバーサルのWF7を購入したところ、快適なキャスティングで飛距離は確実に伸びました。短いラインでも早めに竿に負荷が掛かりつつ、長めのリアテーパーの助けか鈍重に感じず軽快です。ロッドは組み合わせるラインの形状、重さによって全く違うフィーリングをもたらします。本人の技術はもちろんですが、そこにロッド+ライン+本人のクセの相性もあって、ポテンシャルは増幅されそうです。スコットのUSページにある各ロッドのグレインウィンドウ(適合するラインの重さ)はロッドの性格を表すのに最適ということで、ここは無視しないほうがいいかもしれません。シーバスでは無視してオーバーウェイトの8番ラインを組み合わせていてイマイチでしたし、他メーカーのWF8も試しましたが、全く面白くない、違う竿になってしまった感じでした。やはり組み合わせるラインは絶対的に重要です。

その他、セクターのフルウェルズグリップは通常よりも前方に山が寄っていて、キャストしている最中、握りの中にそこを感じて竿の制御がしやすく感じます。カーボンウェブを巻き込んだブランクスは私のねじれたキャストを矯正している感触があって、フライを届ける場所は以前より意思が反映されるようになった気がします。シーバスもクロダイも、フレッシュウォーターの経験以上に確度の高いプレゼンテーションが要求されるので、そのための素材のアップデートやデザインディテールはさすがで、性能の違いを楽しみつつ海の対照魚に淡水にはない楽しみを見出して、すっかりハマり込んでいます。スコットのセクターはその楽しみを増幅してくれる道具となって、毎回水辺で継ぐのが楽しみになっています。

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