2022年もスキーナのスティールヘッドの遡上はひどく、ついでに1$=145円という自分が大人になって初めて見る円安で、その他含め、無理をして行くにはいろいろためらわれる要素満載です。ということでカナダ行きは諦めました。腕は怪しい釣り師といえども、一人でもフィッシングプレッシャーを減らすことは激減する貴重な野生魚にとって悪いことではないと思いたいところです。
そうであれば、今季はシーバスにもう一歩踏み込んでやってみようと思い立ち、100%人工物に取り囲まれた、コンクリートしか見えない港で、しかもガイドボートに乗って追いかけるのですが、まさに20年以上やってきたスティールヘッドとは環境もアプローチも真逆です。それでも3年前にやってみて何かが引っかかったのは、シーバスがたくましい野生の魚であること、見た目自然的なところが全くない東京湾のシーバスの魚影はともすると世界有数と言われるほど水の中には自然の力が残っていること、さらにはフライフィッシングのアプローチが実に多彩であること、なのです。釣り自体が狩猟本能くすぐるもので、どれであろうとハンティング要素が含まれると思いますが、間を詰めていくスティールヘッドに対して狙い撃ちするシーバスは別種のハンティング要素に溢れています。そんなワイルドなゲームフィッシュですから、しっかり楽しむためにボートシーバスのための道具は色々考えました。道具好きとしては今まで未開なそこも大いに楽しみました。
#7/8クラスのロッドがちょうど使えるところはスティールヘッドと同様で、潮を被らないのであればバンブーロッドやハーディのリールを持ち出してもいいのですが、そこは冷静に。せっかくの道具が錆びて衰えていくのは見たくありませんよね。
ロッドは懐かしい、若い頃憧れ、かつて輝いて見えたセージRPL790(1985年製?)とG-Loomis GL4 9'#7(1997年製?)を用意しました。セージはルーミスよりティップがしっかりとしていて、より胴のあたりに曲がりポイントがあります。セージにはRPL-Xというソルトウォーター設計のものがありましたが、昔振りこなせなかった硬い調子で、私にはRPLで十分。この竿はルーミスGL4より強くキャストができます。以前所有していたセージRPL-Xi2はとてもいい竿でしたが、ルーミスGL4はそれに近いイメージのアクションです。バットはしっかりしていますがRPLよりティップがより繊細に感じられる竿です。マットフィニッシュのグリーンのブランクにシングルフットのガイドという外観もユニークです。
ともに7番の竿ですが、この2年使ってみてラインは8番を載せるようになりました。どちらも20年以上前の竿ですが、当時の市場ではとても固い、ピンピンの調子と言われたものだったと思います。現代の竿はさらに固くバリバリだとか。自分にはこの2本は十分固い竿なので、一つ上の重さを載せることで具合よくロッドにラインの荷重を感じ、より快適に釣りができます。指定の7番ラインではうまい感触は得られませんでした。ライン選びは本当に重要です。これで釣りの時間が変わります。海に限らず、フライフィッシングではラインとの相性を探り当てることができると釣りが変わるものです。またラインがよれているとボート上でキャスト、シュート、リトリーブに面倒をきたします。よれていない、絡みにくいラインは釣りを変えてくれます。ラインはよく選んで、そしてメンテナンスが重要と思い知らされています。
より強い感触のセージRPLはフローティング、インターミディエイト、シンキング、どれを乗せてもやりこなしてくれて、改めてこのブランドの竿を評価しています。ティップがソフトに感じられるルーミスGL4はフローティングラインをメインに使っています。もちろんどのラインでもこなすのですが、揺れるボート上、風吹く中だったり、オフショルダーキャストになったりなど、セージRPLに比較してラフなコントロールを許してくれず、より丁寧な扱いを求めてきます。
リーダーはとにかく長くならないように、竿の長さと同じか短くするように気をつけています。当初ここは理解しがたかった部分なのですが、渓流のロングティペットのフライフィッシングとはまったく違う、流れがある川の釣りと違い、スポットに落ちたらそれがそのままスタートになるので、とにかくラインもリーダーも伸びるように、より絡まないように、キャストの力がフライまで届き伝わるようにすることが大切です。これはフライを落とす、というよりフライを狙ったところに撃つ、というのがボートシーバスの楽しみだからと思います。
そしてスティールヘッドと同じくシーバスもリーダーシャイではないので20lbのフロロティペットをためらいなく使います。フライを浮かせようが沈ませようが、フロロで短く、フライを狙ったところに打てるかが勝負。
リールはフィンノア(フィンノール)#1を2種とアイランダーFR1を使います。とにかく小さい口径のリールが好きで、別のページでも書いていますがシーバスはそんなに走り回らないのでファイトする性能にはシビアになる必要は無いようです。スティールヘッドのように走り、また川の流れに乗ってファイトするわけでもないのでリールが逆転することはほぼありません。投げていきなりファイトが始まったことが数度あり、リールファイトにならざるをえない時もありましたが、それでも大したことにはなりませんでした。81cmというフライロッドでは珍しいサイズに恵まれたときもリールファイトになりませんでした。むしろガイドはリールファイトは絶対に推奨せず、なぜなら不意の食い上げが起こったり、余分なラインを巻き取っている間にテンションが緩んだりすることでバレることが多いから、とにかくそれを回避するためにもラインは手で手繰っているのがベストと言います。ついつい巻き取ってリールファイトしたくなるんですが、そういうことをすると指摘が入ります。何十年という経験の上でのご指摘、聞かないわけにはいきませんよね?ボート近くに寄った後に潜ったり走ったりすれば手繰ったラインを手からうまく滑らせて送り出すのですが、そこはちょっと緊張します。
リールに求めるのは潮をかぶっても次回や来シーズン取り出して錆びていないということでしょう。海用といえどメンテナンスはしますが、同じくしたとしたとしても淡水用に作られたものとではその後の安心感が違います。それと個人的にですが、海のフライフィッシングの世界観には重厚なイメージやゴールドのイメージがあり、それも含めて道具選びを楽しんでいます。
3つのリールには、フローティング、インターミディエイト、フルシンキングTYPE4が巻いてあり、状況によってガイドから指定が入ります。9月から11月はハイシーズンで、多くのシーバスが湾内に駆け込んでくるといいます。そういう時はサーフェスが楽しいのですが、潮の加減により出船が暗いうちになったりすればインターミディエイトの出番があり、明るくなれば水面に誘い出すフローティングラインが面白い。それがうまくいかなければフルシンキングでカウントダウンすることもあり、自然の変化に応じて楽しみ方は多彩です。12月以降確率高く遊ぶのであれば釣りの時間は夜に移行し、2月までは暗い中でインターミディエイトをメインに釣りをすることになる。
フライはその時湾内に入ってくるベイトの大きさに合わせて、または狙う場所に取り付くベイトのサイズに合わせてフライを変化させてゆく。サーフェスミノーでもリトリーブの加減で水面下に潜らせていることもあればそうでない時もある。ストリーマーはサイズだけでなく、パターンや巻き方で薄く水なじみの良いものにしたり、はっきり目立つものにしたり、また投射しやすいパターンやそうでないものなど、選び方や使い方に変化があり、通り一遍等ではない、様々組み合わせがあって考察が楽しくなってきます。
私はまだ初心者で引き出しもわずかなので、ガイドの案内を大いに楽しんでいます。仮に釣れなくても納得感があり、経験が重なっていく手応えもあります。スティールヘッドはガイドなしで20年以上やっているわけですが、手探りで苦労しました。おっさんになり、シーバスではガイドのノウハウを享受させていただいている最中です。ガイドが発する掛かった魚の大きさや釣り上がった魚の目測で言う長さがほぼピタリであることや、指定するラインやフライ、季節、タイド、場所など、様々組み合わさる中で推奨されることなど、ガイドの経験に感心させられている真っ最中です。そして見事に、予測通りシーバスが応えてくると驚嘆歓喜。工業地帯の湾内に生きる自然にたくましさを感じつつ。
*ボートシーバスのフライフィッシング情報は意外と少なくて、Tokyo Fly Fishing & Country Clubの説明がまとまっていてとてもわかりやすいです。その他はHermitさんのシーバスのページが貴重で、ブログでも情報提供をコンスタントにしてくれています。