実際に釣りに行けないとしても、見事なカラープレートがそろった本のページを繰るのは本当に楽しいものです。そしてその内容がたくさんのアイデアにあふれていればなおさらでしょう。
以下の書籍はほとんどが英文ですが、フライフィッシャーなら理解に苦しむことも少ないだろうし、進んで辞書を手にしたくなる内容です。たとえ一生、スティール&サーモンに挑戦できないとしても、心の旅は充実する。いや、結局、心だけでは済まされない?
Advanced Fly Fishing
For Steelhead
アラスカのショップで「これほどスティールヘッドの釣りのアイデアがまとまっている本はない、お勧めだ」といわれた本。エレガントなフィッシングスタイルだけでない、野生に挑むスティールヘッダー達の写真とそのアイデアが凝縮されている。スティールヘッドフィッシングのHow toが包括的に掲載されており、多少この釣りを重ねた人には新しいアイデアを。もちろん初心者にも参考になる。買って損はない1冊。まずはこれか?
Steelhead Fly Fishing
スティールヘッドとくれば必ず登場する本。テクニカルな部分より、川やスティールヘッドに狂ったアングラーたちのエピソードが大部分を占める。私が購入したのは、ハリーレミアとキスピオクスのパートが読みたかったから。しかし、暇に任せて周辺を読み進めるうちに、雄大なスティールヘッドカントリーについて見事に描かれている様子が伝わってきた。エピソード多数。カラーページはフライのところで10ページくらい。ほとんどがモノクロ。写真多数。約500ページは読み応え十分。
A Steelheader's Way
第一人者の一人によるメモリアルな一冊。釣人として晩年を迎えている著者がスティールヘッドを釣るという夢の世界に生きてきた物語を語るような感じかと思っていたが、実はこれまでの経験とそこで得たアイデアを惜しみなくシェアしていて、どんどん引き込まれていった。非常に現実的、実際的な釣師である著者が培ってきた技術やアイデア、そして「それは違うよ」というような警鐘が随所にあり、うなずきたくなる。ある程度経験を積んでいるスティールヘッダーに特に参考になるはず。ハイレベルな写真多数、オールカラー、220ページ。
Wild Steelhead
二冊組の豪華本。著者は教育に携わりつつ、長い間スティールヘッドに情熱を傾けてきた人物で、名の知れたスティールヘッダーたちとの親交が深い様子。軽薄でミーハーな感じがない、かなり長い間の構想を経て出版されたと想像する。自分が書き上げた記事とスティールヘッダー達との対談が織り交ぜられていて興味深い話が盛りだくさん。ビル・マクミランやハリー・レミアのパートが自分のお気に入り。この本の編集の陰にはクウォリティの高いフライ雑誌や本の出版を続けてきたトム・ペロー氏が。合計673ページで約1000の写真が楽しい、渾身の一冊(二冊?)です。
Fishing Atlantic Salmon
キスピオクスのほとりで友人に見せられたときは単なるきれいなフライ辞典のように思いましたが、実際はサーモンフライの歴史から生まれた多くのメソッドが濃密に収められている最高の一冊と言えます。辞典といったからには掲載フライの種類は群を抜いていますし、ページ数で約400。私のお気に入りグリーンハイランダーだけでも10以上のバリエーションを紹介。シド・グラッソなど著名スティールヘッダーが巻いたフライ多数。ほぼオールカラー。釣り師の本棚に嬉しい、サーモンフィッシャー必読とも言いたくなる一冊です。
Spey Flies
How to Tie Them
フライタイイングの世界では著名な存在のBob Veverkaがついにサーモンフライで単独出版となると買わないわけにはいきませんでした。内容は釣りの世界を盛り込んでいるSpey Flies & Dee Flies by John Sheweyと違ってタイイングの世界によりフォーカス。もちろん掲載のフライは全て見事。歴史的なフライも数多く、また確かな技術で巻かれたフライは魅力十分。タイイングの要点、各マテリアルの特徴と扱いなど詳しいインストラクション。ドレッサーにとって、スティールヘッダーにとって非常に価値のある1冊と思います。カラーページ多数、全160ページ。
The Art & Science
of Speyfishing
マイク・マクスウェルはバークレーリバーのほとりでガイドをしていたロングタイムスティールヘッダー。長年のスペイフィッシング経験は伊達ではありません。キャスティングスタイルについては合う合わないがあるでしょうけれど、スペイフィッシングの理論は非常に参考になり、スペイフィッシング本来の優位と楽しみを理論的に説明しています。キャスティングパートが3/5、タックルについて1/5、スペイフィッシングについて1/5の内容。すべてモノクロ。写真も多数あるが、イラストで解説されているところのほうが興味深い内容です。
Tying the Classic
Salmon Fly
クラッシックサーモンフライを創る世界的第一人者による初の単独出版。日本国内で主流になっているクラシックとは一味違う独創的なスタイルや仕上げの見事さは一見の価値あり、です。その他著名タイヤーによる各スタイルのタイイングのポイントが連続写真で細かく解説されています。どちらかというときれいに仕上げるほうに重点がおかれており、実用レベルというより、ミュージアムクオリティーをいかに出すかのテクニックがメインになっています。全226ページ、オールカラーは豪華。
Spey Flies & Dee Flies
スコットランド発のフライの歴史とパターンを米国の著名スティールヘッダーがまとめています。パターンブックとしてもとても楽しめる内容で、各フライのクウォリティも十分。歴史を語る中でレディキャロラインの肖像までついに出た。著者はショップ店員、ガイドの経歴もあり、相当の実践派スティールヘッダーということもあって、随所に説得力のあるコメントがあります。釣りに関してはアトランティックサーモンには焦点がなく、すべてスティールヘッドを通して語られているといっていいです。全160ページ、オールカラー。
Fly Fisher's Life
一度は読まねばと想い、何時か蔵書にと考えていました。かなり期待するところがあって読み始めたけれど、ちょっと気を削がれてしまいました。かなりランダムな著述で、書き溜めたものをまとめて1冊にした感じのものです。キャスティングの理論はすでに知られたものですが、ここでもう一度ご本人に聴くというのは価値があるものでした。グレイリングの釣りに傾注しているところがあり、これは興味深い内容です。いずれにしても、フライフィッシングに関する翻訳本として、時にページを開いて釣りを感じることができるという点で貴重な一冊と思います。
The Art of the Atlantic Salmon Fly
いけない。購入したのはいいけれど、なかなか読む気になれないでいます。興味を促す項もなく、ちょっと読んだところですぐに閉じたくなってしまいます。カラープレートもたいした内容ではありません。ベイツの作品ではあまりにもFishing Atlantic Salmonがよすぎるのです。正直な感想です。全232ページ。カラープレートは約25ページ。
Atlantic Salmon
Flies & Fishing
上段にもあるベイツによるアトランティックサーモンの本。こちらのほうが初期になるようです。カラープレートは少なく、あとは釣りの基本となる情報と白黒写真。内容はジェネラルなテクニックをうまくまとめたもので、特にイギリスのフェザーウィングのフライからヘアウィングへの変遷、魚をどう誘うかというところが面白く、やっぱりフライについての話しは興味深いものです。全383ページ。
Fly Fishing
イギリス文学の一作品。タイトルからして一般に広く読まれたとはいいがたい感じですが、釣魚大全に並び賞賛されている名著。ドライフライ、ウェットフライ、シートラウト、サーモン、道具などそれぞれについてパートを持っています。昔開高さんは月刊図書の中で自身が薦める本の書評で他の作家とはまったく違ったコメントをしていて印象に残っています。それと同じコメントをこの出色の作品について差し出すべきかと思ってしまいました。「読めばわかります。」見つけたら買ったほうがいい。釣り人生の後半戦へ、示唆にとんだ内容です。
Steelhead River Journal
Skeena
スティールヘッド、スキーナとくるとどうしても手が伸びました。著者は地元では知られた人。私が良く行くヘーゼルトン近辺というよりはテラス辺りを本拠地に釣りをしており、そちらの内容が多いです。実際の釣り場は知られないような微妙な配慮もあり、それはいいことだと思います。著者がバンクーバーから教師として赴任した時のことから地元の釣り人の様子、スタイルなどが書かれています。フライパターンのページに出ているものはシンプルで、ある意味粗野、特にかっこよくもなく、特に釣れそうにも見えず。。。あえて買う必要も感じないかな。。。
River journal
Kispiox River
キスピオクスはフライでのスティールへッドのワールドレコードをいまだに保持しており、古くから多くのスティールヘッダーに愛されてきた銘川、私のお気に入りの川です。著者はなぜこの川が巨大なスティールヘッドを生み出すのかを生態調査とエピソードを交えて語っています。特に逃げられた魚が本当に大きかったストーリーなど、満員電車の中で感じたくもない人肌や嗅ぎたくもない匂いに取り囲まれていても、読むのがとまらないほど。これは夢か、それとも実際か。行って釣りをし、掛けてみればわかるはず。私はキスピオクスでの釣りをやめられません。47ページ、オールカラー。
Steelhead
& The Floating Line
Trey CombsのSteelhead Fly Fishingにも登場するボブ・アーノルドの作品。作者はロングタイムスティールヘッダーで、その釣りの特徴を日記をつづるような、スティールヘッドをフローティングラインでアプローチするエッセイです。いくらシンクティップが効率的とはいえ、できればフローティングラインでテクニカルにラインを操作し、全層全状況で釣りができることほど快適なことはないとフライの釣り人なら誰しも気が付くところ。ごつい竿にごついラインで川底をさらうのもいいのだけれど、誘う気心一本でフローティングラインで行くのが行き着くところとも思います。なかなかに面白い作品。約180ページでカラーは18ページほど。
Mist on the River
どちらかというとスティールヘッドの経験は豊富ではなさそうな著者ですが、そこがかえって目線が高くならずにスキーナカントリーを表現できていると思います。スティールヘッドのフライフィッシングに関して貴重なエッセイであり、気張らず気楽に楽しめます。ところどころになじみの地名やよく耳にする釣り人が散らばっていて、一気に読み進むことになりました。数年後複読しても同様で、特に私のようにスティールヘッド大好き人間には清涼剤です。写真等の掲載はなく、全て文章のみ。スキーナを旅しようと考えている釣り人は、慌てず騒がず、時に地元の人と対話しつつの著者のような旅のスタイルは一つ参考になると思います。
Steelhead Paradise
作家は米国人。ハンティング、フィッシングを趣味にアトランティックサーモン、ボーンフィッシュもこなし、1950-65辺りにスキーナのスティールヘッドを数回にわたって釣りをし、その釣行紀をパーソナルな視点で語っています。クラシックブックといいたい雰囲気が漂うものですが、この当時から現在と同じく手厚い保全やその警鐘が始まっていたのかと驚かされる一方で、釣れ具合や林道の様子など、1960頃と”今”がダブるあたり、スティールはやはり容易な釣りではなく、またスキーナの自然の深さも再認識。レトロな景色の写真数カット。スキーナカントリーのアウトドアスポーツの様子を文章で楽しむ本です。
Steelhead Flyfishing
in Low Water
ローウォータの釣りに苦しんだ後に購入した本。釣り方に関してそれほど詳しい記述はなく、むしろその状況でどういうフライを使い、フライのタイイングテクニックはどんなものかという内容。ローウォータスタイルで巻かれ、なおかつフラットにセットされている独特のスタイル、そこに行き着いた著者のフライはかなりの経験によってもたらされたものと思われます。カラーページなし。白黒写真とイラストあり。127ページと薄型の本で、どちらかというと私家版の様相。でもムムッとくる内容もアリです。
Steelhead
Fly Tying Guide
雑誌“Wild Steelhead & Salmon”でおなじみのDec HoganやセージのGeorge Cook、Steve Gobin、Mike Kinneyのフライなど、多数紹介。クラシックなアトランティックパターンとは一味違ったスティールヘッド用のフライとして考案・発達したフライをカラーで掲載。各フライを使用する状況がデザイナーによってコメントされており、未経験の人には夢を、実際に釣りを経験した人には更なるアイデアを提供します。
Wild Steelhead & Atlantic Salmon
野生のスティールヘッドとアトランティックサーモンのみにフォーカスした特異な雑誌。まさにコアな釣り人によるコアな釣り人のための内容で占められており、積極的に環境や生態の学術レポートも掲載。全編クウォリティの高い写真が掲載されたこと、一編入魂ともいえる記事がこの雑誌が高評価であった理由だと思います。乱発で毎年似たような内容で構成される雑誌とは一線を画し、スティールヘッドとサーモンを取り上げる限り慌てて仕上げる即席で軽薄な内容とは決別して、編集者が吟味を繰り返して納得に到達したときに発刊されてきました。その時点で尽きたのであれば無駄に発行しないと言う潔さも感じられ、季刊であったのにもかかわらず、短命に終わりました。ラージフォーマットで通常良く見かける雑誌のサイズより1.5倍大きく、かなり贅沢な作り。特にお気に入りの記事は「スティールヘッド・ボブ」についてのレポート。生きる伝説になりつつあるボブ・ヨークのアウトドアでの生き様、スティールヘッドを釣ることに対する狂熱度合いがひしひしと伝わってきて、私なぞの釣りがいかに児戯に類することか。すでに廃刊になっていて現在入手できる可能性はバックナンバーとしてのみ全7刊。
Art of Angling Journal
タイトル通り、写真や絵にこだわりを持った見事な雑誌。下手な本よりよほど楽しめます。サーモン、スティールヘッドだけではないけれど、アートなフライとなるとサーモンフライははずせない項目としてほとんど必ず登場してきます。クラシックばかりでなく、コンテンポラリーなデザインのフライも多数掲載。現代のフライのアートを常に発信しようとの心意気が感じられます。フライに関する内容が多いですが、もちろん道具に関してもアートなものであれば常に取り上げているようで、ボグダンの特集があったり、新進気鋭のバンブーロッドビルダーの特集もあります。サーモン、スティールヘッド、トラウトに関するリバージャーナルも盛り込まれており、読み応え十分。ページを開くたびに蔵書である喜びも感じられる内容です。季刊誌。