Meiser Trouter & Transformer

R.B.Meiserはブランクテーパーもコスメティックもユニークな竿作りを継続してきていて、ずいぶん以前から開発しているオリジナル、スウィッチロッドは10年を経てそのコンセプトが最近(2007年)大手メーカーで本格的にコピーされはじめた。

さらにマイザーのユニークは続く

Switch Rodは10'6"を基本の長さにしており、シングルハンド、ダブルハンドどちらでも状況に応じてスタイルを切り替えられるのが最大の特徴であるけれど、それが今度は完璧なスペイロッドにトランスフォームするというのである。まだ市場に出たばかり(06-07年)のNEWコンセプトのロッドで、マイザー自身この竿をトランスフォーマと呼んでいる。(その後コンバージョンロッドに変更)

ずいぶん以前(2002年頃)からこのアイデアを形にして一部のテスターに供給され、テストされてきたようである。けれど、開発当初は北米市場はやっとスペイ熱が本格的に始まったころで、マイザーのトランスフォーマが市場で理解されるには早いと判断したとは本人の弁。時機をうかがい、その間熟成に努めてきたとのことである。

Meier Switch Spey Rod Conversion

Meiser市場の成熟度を見て製品投入するというのはブランディングの一つの手法で、ブランド価値を大切にする姿勢である。ビジネスの駆け引きの失敗として、ビジネス規模優先になり、マスブランドに成り下がった挙句、市場でブランド価値が一気に失われることがある。とにかく新製品を投入し、市場の熟度やブランド/製品のポジショニングを無視した軽率な行動に出て自らの存在価値を殺すというものである。マイザーは一歩踏みとどまって、小規模メーカーである自身を理解し、そして釣人との交流をベースに遊びの姿勢を保ちつつ、情熱を暖めてきた。たとえTFOやビューラとの交流があろうとも、オリジナルの心意気はまだあるといえそうだ。

そのトランスフォーマがいよいよオープンに紹介され、そして私の手元にも届いた。今回はマイザーが日本ならこれだろうというお勧めに従い、そしてせっかくなので入魂のカスタム仕様を熱望し、フェザーインレイをリクエスト。ただし、インレイとスレッドワークはお任せにして、マイザーの粋を伺うことにしてみた。手にして相変わらず第一印象はギョっとなったけれど、袋の紐を解いてロッドを取り出すたびに、ウムといいたくなってくるこの不思議は再び、であった。スペックは下記になる。

 

全部で6pc。
10'6" #5/6/7 4pc Switch System 2 TrouterはWF5/6/7/8をキャストし、2-10lbを対象にする。
シングルハンドキャストを見込んでアップロッキングにシートをセッティングしている。ストリッピングガイドとその上はSICになっている。
このスウィッチロッドのグリップを1本抜いて、別の2本(バット+長めのグリップ)をつけ、13' #5/6/7 5pcs Highlander/Trouterにトランスフォームする。
このときストリッピングガイド含め下から4つがSICガイドになり、大、中、中、小のサイズが並ぶので若干奇妙。スペイキャスティング用としてリールシートはダウンロッキング。
スペイロッドになるとグレインウィンドウは300-450で4-15lbまでの魚に対応する。

 

穂先は繊細で、ブランクスはファストアクションのプログレッシブ。スウィッチロッドとして実際にDT6Fラインを快適にキャストし、またWF8Fも普通にキャストできる。スペイロッドとしてはまだ試行段階だからなんともいえないけれど、WF8Fでは軽すぎるようだった。ということは、ある意味かなりの魚が掛かっても問題なく、まして日本で、特に本州でトラウトとなるとこれ以上の強さのロッドを使用することは想像しにくい。いずれにしろ実践を経てのコメントが今はできないので、下記にマイザーのコメントをSwitch System2とHighlander 13' #5/6/7の両方で記載するので、これをもとにトランスフォーマの変化ぶりを参考にしていただければ、と思います。

 

ロッド解説 by R.B.Meiser

Meier Switch Spey Conversion Rod

<System 2 & 4 Switch Rod>

このロッドはスウィッチ・シリーズの中でもっとも精妙なロッドです。北米西海岸のもう一つの最高の楽しみをもたらすフライフィッシングとしてローグリバーやクラマスリバーの“ハーフパウンダー”の釣りがあります。1-3ポンドのアダルト前のスティールヘッド達は中流から下流域に見られ、真夏からそして夏の終わりまで、これらの大川では何千もの銀化したスティールヘッドが居ついています。この小型のロケットとも呼べるスティールヘッド達は豊かな生態系で繰り広げられる水生昆虫の挙動にアクティブに反応し、経験を重ねたアングラーはこれに対してトラウティング・テクニックが効果を発揮することを良く知っているものです。ソフトハックル・フライやストリーマーのスウィング、インディケーターをつけてのニンフィング、そして場合によりドライフライ・プレゼンテーションを駆使するなど、あらゆるトラウトフィッシングのテクニックが有効です。システム2&4ロッドはこれらとびきりの魚にフライをプレゼンテーションするために開発されました。

System2&4はスモールゲームフィッシュのマルチパーパスフライロッドとしてその性能が証明されてきています。10'6"という長さは多くの場面でロングリーチ・キャストの要求に応えてきました。フローターやドリフトボートからのプレゼンテーションも非常にも効果的で、川でも湖でも、大型のドライフライを強風の中で投げきるチカラをもっています。大型のストリーマー、ウェイテッド・ニンフ、ドライ、そしてインディケータをつけたニンフやドロッパーシステムでもキャスティングに不足を感じることはありません。ラインセッティングを適切に行えば、18-21mのスペイプレゼンテーションを快適にこなし、通常のオーバーヘッドでは近づきがたい流れでもこのスペイプレゼンテーションの能力が道を切り開くはずです。またシングル、ダブルハンドのオーバーヘッドデリバリーでは27mからのキャスティングをこなすでしょう。

System2&4はミッドサイズからラージサイズのトラウトを追い求めるロッドとして一流の道具であり、温水のゲームフィッシュ達にも効果的に多様なフライをプレゼンテーションすることができます。スウィッチロッドシリーズ全般に言えることですが、とてもリラックスしたキャスティングが可能であるばかりでなく、信頼に足るキャスティングの道具として、1日の釣りを本当に楽しむことのできるパフォーマンスを発揮することと思います。

-詳細情報-

シングルとトゥーハンドでのオーバーヘッドキャスト、シングルとトゥーハンドでのスペイなどワイドバラエティなテクニックが可能

ドリフトボートやフローターからキャスティングに理想のパフォーマンス

ハイスティック・ニンフィングやインジケーターニンフィング

ウェットやストリーマープレゼンテーション、グリースライン・スウィング・テクニック

大型のドライフライのキャスティングや風がある状況下のキャスティング

トラウトやバスなど10lbまでの魚に対応

ボーンフィッシュ、レッドフィッシュ、ストライパー等、ライト・ソルトウォータ・フラット用のロッドとしても理想的

グレインウィンドウ:150-300

 

<Highlander S2H130567 Trouter Spey Rod> Fast/Med Fast Progressive

S2H130567は居つきの大型マスやチャーのみならず、同時に、季節になればサーモンやスティールヘッドが回遊して戻ってくる川に理想的なロッドです。こんな川では可能性としてサーモンやスティールヘッドが掛かった場合のことを考えるだけでなく、マスやチャーの釣りでの繊細さも併せ持った竿がほしくなるものです。

もしこんな川、たとえばオレゴンのディシューツでスティールヘッドの可能性もあり同時に美しいレッドバンド・レインボーを釣ろうというのであれば、S2H130567は理想のロッドとなるでしょう。このレインボーは砲弾型の元気者で、20インチ以上、5-6lbのサイズは珍しくはありません。スティールヘッドもまたほとんど1年中見かけられ、多くの場合レインボウと同じ流れの中にいて、レインボウのフライに掛かってきます。S2H130567はその両方の魚をハンドリングし、1日中のキャスティングを軽快にこなすよう軽く仕上がっています。

また多くの川では温水と冷水の変わり目があり、温水に適する魚が冷水域で釣られたりすることもあります。たとえばこれはスモールマウスバスと大型のブラウンが同じ流れで釣られるようなケースです。バスには空気抵抗の強いディアヘア・バグやクラウザー、あるいはポッパーが使われますが、このロッドはこういうフライのデリバリーも可能です。

優れたオールパーパス・ライトウェイトロッドであること、これがS2H130567ロッドをあらわす全てです。

-詳細情報-

グレインウィンドウ:350-450

4-15lbのゲームフィッシュすべてに適合

 

日本の鱒を釣るトゥーハンドロッド

Meier Switch Spey Conversion Rod

上記マイザーの解説を読んで何かピンと来た人が何人かいたのではと想像します。トランスフォーマはまさにそういう人に可能性を引き出される道具と思います。

かつて日本では15fで#10が長い間標準になっていて、これは欧州のサーモンフィッシングの標準がそのまま持ち込まれたような感がある。欧州のサーモンはご存知アトランティックで、それらを対象にしているスペックで果たして日本のトラウト達と対等な感触が得られるのだろうか。ゲームは成立しているのだろうか。

某社の14f#9はサーモン&スティールヘッドロッドで50cmの鱒の竿ではない。某社の15'#8もスティールヘッドロッドで、日本の本流ヤマメの竿ではない。ましてや某社の16'#10/11というスペックになると、本州の川でいったい何を釣ろうというのだろう。強風あるいは広大な河原を前にどうしてもかっ飛ばしたくなるし、有り余るくらいのパワーが助けになることはわかっている。でも、この度を越したオーバーパワーにフライフィッシングのゲーム性が損なわれていると感じる人は結構いると思うのだけれど。

ずいぶん道具の仕様も変化し、特にスペイラインとシンクティップシステムが深く考察されるようになって、ライトタックルでも守備範囲が広くなってきている。であれば日本のトラウト用のスペイロッドも考え直していいはず。たとえばこんな竿、マイザーのトラウター&トランスフォーマのような竿を。