2021年最悪を更新・・・そんなニュースが入りました。ついに今年は10月12日からスティールヘッドはクローズです、あのスキーナ水系で・・・
昨年、2020年の遡上は過去10年の平均の半分以下でした。コロナ禍で海外渡航は大きく制限され、釣り人はBCの人間だけだったと想像し、それは時に自然に対して必要な休息を与えることになったのかもしれないと思いたいところです。そして2021年は輪をかけて “最悪” を下回ることになってしまい、ちょっとした休息与えて済む問題ではない気配です。
8月の終わりころから様子が報告され始め、志ある釣り人たちは自分たちで釣りをするなら1日1匹で上がるようにしようとか、釣りを続ける人はフックポイントを折ってやるべきだとか、あるいはこの惨状で釣りをするには忍びないとロッジやガイドをキャンセルする人が結構出ている様子でした。
下のグラフはスキーナリバー河口付近のカウンターが示す遡上数ですが、赤い線が最低をありありと示しており、2021年は過去平均(緑の線)の2割くらい、そして過去最悪(茶色の線)を下回っているのがわかります。
(1920年前後、まだ豊かな遡上があったスキーナ川の河口付近はカナダ人、中国人、日本人の合計300の漁船がそれぞれ400メートルの刺し網で漁を行なっていました。それはシーズン中河口を端から端まで隙間なく、さらに何重にも重なって埋め尽くすような感じでした。周辺には15もの缶詰工場があり、競って行われた漁は遡上に深刻なダメージを与え始め、徐々に漁の制限を行い、カウンターで回帰の数の確認をするなどしてきた歴史があるようです。)
下のグラフはデイリーの遡上数ですが、9月に入ってほぼゼロ行進の状態です。
下のグラフは毎年の遡上数を示した折れ線グラフです。最高時6万超え、最低時8000。この最低の8000に近づく時が釣り禁止の兆候と思っていたようですが、今年5000となり、一気に悪い局面を迎えてしまいました。この5000がワールドクラスのそれぞれの川に散らばって戻って行くわけで、キスピオクスなどは数百になってしまいそうです。これではシーズンクローズすべきでしょう。
この状態になった理由は様々な環境団体で考察されているようで、コマーシャルフィッシングや釣り人のプレッシャー、そして福島の汚染水放水(スキーナのスティールヘッドはカムチャッカ、北海道近くまで旅をするようです)まで、ありとあらゆることを考察しているようですが、これらには決定打はなく、SkeenaWildではおそらくメインになるインパクトは2つと考えているようです。
一つは気候変動によって、海水温の上昇で海に出たばかりの若い魚がダメージを受けている、あるいは今まで出会わなかったプレデターによって捕食されている、洪水の頻発あるいは極端な渇水による産卵床や幼魚がダメージを受ける、などなどの説。気候変動による影響は私たちも時に身近に肌で感じる部分です。これは人類が取り組むべき問題で、日本にいてもその日常をシンプルにローインパクトで過ごすことは本当に重要なのだと思います。
2つ目はアラスカ付近でのアメリカによる漁業です。ソッカイやコーホなどはベーリング海から北米大陸に沿ってスキーナ、ナス、フレイザーに戻ってきます。スティールヘッドも同様の航路をたどり、下の図のように彼らが回帰するとき、途中アメリカの漁船によって大量に捕獲され、その中にはスティールヘッドも多く混じっていて、その影響は馬鹿にならないのではないかという説です。もちろんスティールヘッドは捕獲禁止ですが、捕られていないかは知る由もなく、選択的に漁ができない中では十羽一絡げで捕獲されている可能性は高いというのがカナダ側の経験でもわかっているようなのです。
下のグラフはカナダのスキーナ河口での漁業を示すグラフですが、過去9シーズンのうち4回はストップしたりしており、彼らはインパクトをその時々考慮してやってきているとのことです。
他、もう少し詳しく知りたい方は以下の動画を御覧ください。英語ですが比較的わかりやすく解説をしてくれており、役に立ちます。スティールヘッドを愛するのであれば必見です。
2021年に起こっているスティールヘッドの遡上の減退は、もはやカナダの、スティールヘッドのことだけの話ではないのだと思います。人間が自然にしてきた仕打ちをスティールヘッドがその生態をもとに(一部)色濃く写し出し始めているということなのです。ダムもない、ふ化場もない、そのスキーナ水系で現れるネガティブな変化はやはり気候変動によるものと考えるのが自然でしょう。ダムを造って水系を破壊してきた日本はとっくの昔に遡上魚が環境変化の指標にならなくなっていますし、放流してごまかし、レジャーを成り立たせている国なのでスティールヘッドのこの話しをして感じる人はわずかかもしれません。しかしこれは本当に深刻です。何事もグローバルに考えるなら、自然を愛する一人であれば、これは他人事ではないのではないでしょうか。
以下スティールヘッドの保全に関して私もわずかながらサポートしている団体のリンクになります。
間違いなく世界屈指の、野生のスティールヘッドが回帰する河を多数抱するカナダ・ブリティッシュコロンビア州のスティールヘッド保護団体。毎年危機が叫ばれる中、地道な活動は長きにわたって続いています。当サイト管理者はライフタイム会員です。
スキーナカントリーのワイルドライフを保全保護するために立ち上がった団体。深刻な遡上減退に立ち向かっています。97年以来愛してやまないこの土地の自然をわずかでもサポートしたく、当サイト管理者はマンスリーで寄付をします。